カサマビ

温浴施設
カサマビ

江戸時代から続く笠間焼や陶芸の街として知られる笠間市にサウナ施設を計画した。
建築主からは地域の方だけでなく遠方からも笠間市を訪れるきっかけとなる場所を求められた。
周囲は陶芸学校や美術館、ゴルフ施設が点在しながらも住宅が立ち並ぶ、入り乱れた環境の敷地である。
衣服をまとわずに利用が想定される施設として、北側にはカフェ、東側・南側は住宅に面しており西側には広陵に上がる私道が続く、四面楚歌な状況と読める敷地であった。
敷地条件からプライベートとパブリックを考えながらいかに街にそぐう形態とかを考えるよう計画を始めた。

建築がつくりだす空間は"人が留まる場所"と"循環し流れる場所"で構成されることが主である。または"都市や文化も受け継ぎ残し留めるもの"と"流動的な流れや活動を生みだす場"としてあらわされることもある。
本計画は笠間市が陶芸の街であることを受け継ぐように町に点在している登窯の形態から着想を得て、空気の流れや人の流れが留まり・流れ、周囲の文脈を繋げるように設計を行った。

外部について壁は焼杉張り、屋根は平葺きの金属板葺きで登窯を参照した片流れ屋根、屋根勾配については地域に多く見られる三寸五部勾配とした。
アプローチは稲田石の三部砂利を建物周囲に設け、領域性を可視化させている。
アプローチ階段は墨コンクリートとし外部の焼杉張りと外構の稲田石敷きを調和させる素材を意図している。
登窯形態の片流れ屋根とすることで、笠間市に点在しているエッセンスを取り込みながら地域に呼応するカタチとした。
内部については横方向に動線を通し縦方向に軸線を通すゾーニングとし、更衣室や内気浴、トイレ・シャワーが取り付き、アプローチからサウナを見通す明快な平面計画としている。
外気浴は3m角の吹き抜けを設け、広陵からの視線を遮りながら光を風を建物内に取り込む計画とし、サウナを中心として左右対称に水風呂と温浴風呂を配置した。
階段下に井水を汲み上げた陶器浴槽を設けており、年中均一な水温で水風呂に入ることができる。
二階は休憩室となっており床材を耐水性のある県産畳材とすることで、寝転がりながらの内気浴中も吹き抜けを通して時期や時間によって変化する光や風を感じながら、自然に空と森林を感じることができるよう計画した。

薪ストーブの炎のゆらぎ、井水によって建物内に伝わる水の音、吹き抜けから入る光、外気欲に抜ける季節ごとの風、は日常の喧騒から離れ自然と対峙する。茶室の露地は歩むうちに茶室入りの覚悟をさせるが、この建物ではサウナに向かう軸線がサウナにより熱され水風呂によって清浄される体験を期待させる。

サウナによる緊張と解放と建物が持つ方向性と軸線によって、外も内も含めて自然の中の気がただよう等質な空間を目指した。

共同設計:bench 上野 翔太・山地 愛里

所在地茨城県笠間市
主要用途サウナ
家族構成
建築面積79.50m2
延床面積98.84m2
構造構法木造在来工法
規模二階建て
設計期間2022.2〜2024.3
工事期間2024.4〜2025.2
構造株式会社片岡構造 片岡 慎策
施工有限会社大枝建設 大枝 輝生
撮影大竹 央祐