ワハウス

事務所
ワハウス

京都市中京区に会社を構える工務店、駐車場であったスペースを事務所へ改修した計画。
古くから地域で工務店を営まれていた建築主からの要望を読み解いていくと「”和”やかに、地域と繋がる”輪”となるよう、自然と対”話”が生まれる場所」を潜在的要望としていることが分かり、3つの”ワ”が設計の手がかりとなった。
計画地は商売人の町である中京区にあり、前面道路には歩道もあることから常に人が往来している。昔から京都は見世棚や町棚をつくり、街とのつながりを持ってきた歴史から一階を特別な場所と捉えてきたように思う。設計するにあたり、歩道から地続きで建物の内外を繋げるために、地面を起点とした連続性が「一階の持つ開放性と地域性」を繋いでいくよう考えた。

構成としては京都の町屋に習って動線をまっすぐ通し、そこへ短辺方向に土間、床、小上がりの領域がとりつく「片土間(ニワ)・床上三室」を意識した。
京町家では三和たたき土のニワがまっすぐ軸線上に通ることが一般的であるが、ニワを通してしまうと接客・執務エリアが狭くなり、仕事の効率が下がってしまう。軸性を転換するべくしつらえた小上がりを南北方向に通し、ニワを参照することにした。
短辺方向にルーバーや壁面収納、階段・キッズスペースをしつらえる事で、小上がりを介してレイヤー状に多様性のある空間が広がっていく事を目指した。
小上がりは人の居場所を分けることなく、分節的かつ緩やかに空間をつなげることを意図しており、執務室や来客を迎える場所として設けたルーバー壁は、土間エリアと執務エリアを分割することなく、ゆるやかにつながる空間となるよう設計している。
ルーバーと上框を楕円形の形とすることで偶有的な形から生まれる平面的な広がりを生成する。

また「普通の材料だけで作りたい」との要望もあったことから、壁やルーバーに採用した木材は一部を覗いて、すべて桧や杉の針葉樹とし厚みや太さにより素材のもつ特性を活かし、床のアプローチ・土間はすべて南部石を混ぜた洗い出し、天井は和紙クロスにEP塗装とした。
こうした人の手が作り出す素材感が、人の心を惹きつける建築の要素になるのではないかと考えている。

和やかな雰囲気を持つ素材、楕円形や軒下のルーバー、人がちょっと腰を掛け対話するベンチなどは、来客だけでなく働く人も心地よく過ごせる空間ができたのではないかと思う。

所在地京都府京都市
主要用途事務所
家族構成従業員7名
建築面積56.21m2
延床面積152.41m2
構造構法鉄骨造
規模3階建
設計期間2022.9〜2023.7
工事期間2023.8〜2023.11
構造宇治川大園建築設計事務所(什器・家具)
施工ヒラサン(株)平山 正訓
撮影amu photograph 吉田 祥平